学生さんへ | 現在の日本では少子高齢化、地縁血縁関係の希薄化などにより、家族や社会におけるコミュニケーションの減少が進んでいる。若年世代においては、晩婚化、ニートやフリーターの増加等も相まって、単身者はますます孤立しやすい状況にある。そのような状況の中、近年、特に若者の間で学校や家族、職場、地域社会以外の場所で第三の居場所を求める動きが活発化している。
家族では無い他人と「シェアハウス」にて複数人で居住するライフスタイル、「住み開き」と呼ばれ自宅を交流の場として多目的に開放する動き、旅先で旅人同士コミュニケーションを取れるラウンジを設けた安宿である「ゲストハウス」、カフェの形態を取りながらその中で緩やかな交流が行われる「コミュニティカフェ」、フリーランスが共同作業出来るスペースである「コワーキングスペース」など、様々な居場所を作る動きが全国に広がっている。京都市では、平成24年度より「京都版トキワ荘事業」がスタートし、シェアハウスにて若手漫画家の育成を行う取り組みを行っている。また平成26年度に京都市左京区と「つながる左京」グループが連携して「まちの居場所でほっとプロジェクト@左京」という取り組みを行っており、居場所づくりのための講座の提供などを行っている。「居場所づくり」は地域の防犯対策や、文化芸術拠点の活性化、住民の孤立化の防止に繋がり、空き家の有効活用という観点からも京都市が近年カを入れているテーマである。
家などの空間を複数人でシェアし、他者との繋がりを作る動きが活発化している背景には、ソーシャルメディアを媒体にし、居場所の情報がシェアされやすくなったこと、人との繋がりの仕組みが変化してきた事などが関係している。また東日本大震災以降、震災復興を通じた人と人との繋がりの重要性が全国的に見直された事も無関係ではない。
本授業ではこれらの居場所を巡る動きが、私たちの生活にどのような影響を与えて行く可能性があるのか受講者と共に考えたい。京都市内で公共性の高い居場所として機能している場所を訪問し、居場所づくりの方法論を実践的に学ぶ。また室内の空きスペースを使って企画、空間プランニングのワークショップを行う。評価の高かったプランナーの案についてはイベントとしてそのスペースで実現し、受講者全員にそのプランナーの案を元にスペースの広報、運営について体験してもらう。 |
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