学生さんへ | 本講義は、さまざまな保存・再生政策にもかかわらず、また「京町家ブーム」という華やかなスポットライトを浴びているにもかかわらず、減少に歯止めが止まらない実際の京町家の映像記録(デジタルアーカイブ)を残すという一連のプロジェクト作業を通して、学生自身が伝統文化の保存・継承のありかたについて再考することを目的とする。本講義では、フィールドワークの基本技法、映像理論を習得すると同時に、調査の企画から撮影、パソコンでの映像編集、DVD作成までの全過程を経験する。
古都京都の歴史的文化的シンボルのひとつである京町家は、平安中期から昭和初期までに建設され、歴史の中で常に変化しながらも、京都の町並みを象徴する伝統的な存在としてあり続けてきた。しかしながら70年代以降における地場産業の衰退と都市再開発の波のなかで大幅に減少してきた。近年、京町家のもつ文化的経済的価値が見直され、社会の関心が高まった結果、「京町家」は、現代的に解釈された伝統・文化・経済・生活の凝縮された空間となり、従来の町家の機能を超えた「京町家ブーム」が起こっている。このように華やかなスポットライトを浴びながら、現実には確実に数を減らしつつある京町家を、映像人類学の手法で多面的に記録することは、学術的に意義あることと考える。
昨年度は、江戸時代(推定約300年前)に建設された文化財指定の一軒の町家の修復工事に密着し、ドキュメンタリー映画を完成させた。本年度は、昨年に引き続きその続編として、これらの美しく改装された町家が、今、この平成の時代にどのように蘇っているのかを映像で記録していく。具体的には、伝統ある西陣千両ヶ辻地域にて再生利用されている町家に密着し、そこを中心として、”新しい京町家”というものが一体、この平成の時代に人々にどのように発信され、解釈されて受け入れられ、活用されているのかを映像で記録する。そして学生自身がカメラのレンズを通して観察したことを自らの手で編集し、ドキュメンタリー映画を制作するという一連の作業を通して、現代の京町家文化について再考すると同時に、伝統文化の保存・継承のありかたについて考えていきたい。
本講義では映像人類学の手法で、ドキュメンタリー映画を制作するため事前にシナリオはない。そのため、頻繁に現場に行って撮影を行う必要があり、フットワークの軽さやチームワークが要求される。映像編集およびビデオカメラ撮影技法については講義の一環として解説はするが、受講生独自の努力が必須となる。 |
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