学生さんへ | 四条・祇園は、2004年に『日経グローカル』が発表した「都市観光地の魅力度評価調査」において魅力ある都市観光地の1位に選ばれた。町の魅力としては「歴史的な建物・街並み」が最重要視されている。また都市の特色においても「地域の固有性」「歴史性」「文化性」といった項目が上位にあがっている。ところが、観光客からは「なぜ八坂神社の前にコンビニを建てさせたのか」、「目当ての店がまったく別の店になっている」といった、街並みの変化についての問い合わせや意見が寄せられている。また、裏通りの路地も変化した。街並みの変化とともに、空き巣や放火といった犯罪が激増している。なぜ街並みの変化が起こったのか、何が犯罪を増やしたのかを解明することは、町にとっての喫緊の課題である。
近代まで祇園の街並みが守られてきたのは「しきたり」というソーシャルキャピタルが存在していたからではないだろうか。「しきたり」を守れないものは排除され、また「しきたり」を知らないものは町に入り込めない。そのことが、祇園という土地に対して帰属意識を生み出し、その地で「生活する」ものとしての自覚と責任感を持たせることになっていた。とはいえ、社会・経済環境が大きく変わった今日、昔ながらの「しきたり」だけで町を守っていくことには限界があると思われる。伝統的なソーシャルキャピタルに綻びが生じているのである。歴史や伝統に配慮しつつも、新しいソーシャルキャピタルを確立していくことが必要ではないだろうか。
明治時代に建てられた町屋を改装した喫茶店を中心に、祇園のソーシャルキャピタルである「しきたり」をママや古老から学びつつ、地域で生活し、店を営む人たちが何を考え、どんなまちでのどのような生活を望んでいるのかを調査する。そこで生活を営むものだからこそ気づく問題点を、第三者である学生の目で可視化し、実践的な問題解決に取り組む。そこに、クリエイティブな思考と行動力を結びつけ、新しいソーシャルキャピタルを構築し、歴史的な街並みの維持・再生を提案することを目的とする。 |
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