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2014年度クラスレポート

京都の伝統織物をつなぐ~織物文化ビジネスプロジェクト~

Vol.1 2014.8.8

織物はかつて、人々の日常に溶け込んだ、身近な存在でした。特に日本の錦は、生活に根ざす「衣服」という立場でありながら、美術品としても人々を魅了してやまない美しさを有しています。本来錦とは、織物の中で最も美しい最高級の織物のことを指しています。ある特定の商品名ではありません。
そして、それを支えてきたのが多くの職人たちの誇りと技術です。しかし、近年の織物文化の衰退により、長い伝統の中で培われてきた高度な技術の多くが失われようとしています。
わたしたちのプロジェクトは、織物のなかでも京都で盛んな錦織を中心に、伝統を大事にしながら、世界に誇る日本織物文化の活性化につながるような魅力的なビジネスプランを目指して取り組んでいきます。
春学期の活動内容
京都の伝統織物をつなぐ~織物文化ビジネスプロジェクト~画像1
①織物産業の職人工房への取材
錦織は分業体制のため、一つの織物を作るために各工程に卓越した技術を持つ職人がいます。また、それらの工程において使用される道具ひとつをとっても、その背後には、それらを作るための高度な技術を有する職人の姿があります。錦織とその文化について知るため、職人の工房へ見学に伺い、お話を聞かせていただきました。

②ゲストスピーカーによる講演
「ビジネス」プロジェクトであるという観点から、伝統産業の活性化のヒントとして、旅行観光業の方面からゲストスピーカーを招き、旅行観光業の側面から伝統産業を活性化させるために必要なことについて講演いただきました。
③調査
現状を知ること、既にある伝統文化ビジネスの事例から教訓やアイデアを得ることを目的として、3つの調査班(伝統文化調査、海外織物調査、日本織物調査)に分かれてデータや事例などを調査しました。

【伝統文化調査班】
この班では、一度「織物」という枠から敢えて離れて織物以外の伝統産業に視野を広げ、そこから得られた知見を活かすことを目的としました。具体的には、売上を伸ばす事に成功した(宇治茶の)事例や、マスコットキャラクターの活用例などを調査しました。その結果、日本の発信力の弱さや、伝統文化に触れる場の少なさなどに問題があることなどが浮かび上がってきました。
【海外織物調査班】
この班では、日本以外の国における織物産業に目を向け、そこから得られた知見を活かすことを目的としました。具体的には、海外への出荷が減少している現状や、日本国外でのニーズ、海外展開に成功した(南部鉄器の)事例、政府への売り込みについてなどを調査しました。
【日本織物調査班】
この班では、日本国内にある錦織以外の織物産業に目を向け、そこから得られた知見を活かすことを目的としました。具体的には日本における伝統産業全体の動向や、京都と他の織物産地の違い、着物文化の歴史、男性の着物、中小企業と学生を繋げるプロジェクトの事例についてなどを調査しました。

春学期の活動を通して学んだこと
京都の伝統織物をつなぐ~織物文化ビジネスプロジェクト~ 暈繝段文

暈繝段文

①錦織・織物文化のすばらしさ
・工房そのものの魅力。良い意味で非日常を感じられる空間
・ものづくりの仕事に対して誇りを持って取り組む職人の姿
・織り方次第で色、模様、質感が多種多様
・高水準でいくつもの過程に分かれ、且つ、手作業で行われるので簡単に再生産できない→世界で一つ
・精巧、緻密、高級、丈夫
・季節に合わせたデザインを提供できる
・芸術性からファッション性、実用性を同時に含む
②織物の織物産業・文化が抱えている問題
織物が現代の生活スタイルにそぐわなくなり、売上出荷金額の下落とともに、職人数、工房数、産業規模の低下が生じていて、それに技術の伝承の困難性、職人の高齢化、後継者不足が、拍車をかけている状況を知りました。
春学期の活動を踏まえて決定したプロジェクトのコンセプト
「織物で感動を!思いを大切にしよう!」
春学期の活動を通して、感動こそが人々に織物に興味を持ってもらえるきっかけであるとの確信に至りました。感動、というのは生の強烈な実感、という意味です。わたしたちは、それこそが人を動かす、という結論を出しました。なぜなら自分達自身が、工房見学など実際に目で見て、職人さんの話を耳で聞くことで、織物に対する関心が一挙に強まったからです。このコンセプトを活動の軸として今後の活動を進めます。
具体的には、織物が作られる背景や、織物に関わる職人の想いを大切にしていきます。
また、重要なテーマとして、
「プロジェクトの活動期間を終えても、できる仕組み、持続性」
を掲げ、その実現を模索します。受け継がれてきたもの、そして受け継がれていくものであることが、伝統というものの条件そのものだと思います。つまり、わたしたちが扱うプロジェクトにおいては、一過性で終わってしまうことは、問題の根本的な解決にならない、と考えたからです。
今後の活動
知識を蓄え理解を深めることを重視した春学期。秋学期はそれらを糧に、企画の実行をスタートさせます。夏季休暇中も実現可能性やビジネスと伝統を両立させる観点から企画の具体化を図り、9月に行う合宿で企画の最終調整を行い、秋学期からは「織物で感動を!」与えるために取り組んでいきます。

報告者:履修生 児玉 菜さん(文学部2年次生)